箕輪ビジネスフィールド 代表 林さん

週末になると山に入り、木を伐り、菌を打ち、キノコを育てる。
10年前、父とふたりで「キャンプ場を作ろう」と思い立ったところから始まった林さんの山仕事は、いつしか山小屋2棟、BBQレンガ炉、ピザ窯、300本を超えるほだ木を生み出す暮らしになっていました。計画も設計図もないまま始めたその営みから見えてきたのは、仕事そのものの本質だったといいます。生傷を負いながら道具の使い方を覚え、ホームセンター通いから人との信頼関係を学んだ、林さんの週末の山仕事に迫ります。
週末は、山に入る
長野県上伊那郡辰野町の高速道路の近くに少しばかりの山を持っており、10年ほど前に父と一緒に「キャンプ場を作ろう!」と思い立ちました。それ以来、天気の良い日はほぼ山仕事をしています。
手入れをしてこなかった山は、急斜面に雑木がうっそうと茂っている薄気味悪い山でした。その山を人力で平地にし、光を入れるために木を伐採し、素人ながら山小屋を作り、BBQレンガ炉、ピザ窯を作り、キノコ栽培にも取り組んできました。
木を伐り、菌を打ち、恵みを育てる
山小屋1号を作り、BBQレンガ炉を作り、山小屋2号は半年間で仕上げました。ダルマストーブとピザ窯も設け、山仕事の後には、山小屋で過ごす時間があります。
キノコの季節になると、山の営みはさらに深まります。冬になるとナラや桜の木を伐採し、一冬寝かせたら、春に玉切りして種菌を打ち込む。それを毎年繰り返すうちに、300本以上のほだ木(種菌を植えつけた原木)になりました。
「もういいでしょ!」と毎年思いながらも、何かに取り憑かれたかのように作り続けています。
手入れされていなかった山に人の手を入れ、光を入れ、伐った木をほだ木として活かし、菌を打ち込み、キノコを育てる。山の資源を使い捨てるのではなく、暮らしの楽しみへ、学びへ、仕事への知恵へと循環させていく。
そこには、有限な自然に向き合い、手を動かしながら調和を探り、循環の中から豊かさを見いだす、右巻きの実践があります。
山仕事から、仕事の本質を学ぶ
林は、この山小屋生活から得たことは、普段の仕事にも直結する内容だと語ります。
慣れない山仕事は、最初は父と一緒に活動していました。でも、それでは、全然、身につかない。チームでの活動ももちろん大切ですが、本当に成長するのは、自分ひとりで考えて行動した時だといいます。
また、10年前に「キャンプ場を作ろう!」と思い立ったものの、詳細な計画はゼロでした。けれども仕事を始めると、次から次へと、やるべきこと、やりたいことが見えてくる。結果や成果ではなく、やること、つまり考えて動くことそのものが楽しくなってくる。あまり頭でっかちにならず、やりながら考えることが自分には合っていると語っています。
山仕事では、生傷も絶えません。思うように仕事が進まないことも多くあります。けれども、一度怪我をすると、怪我をしない道具の使い方が身につきます。そして、短時間で仕事を進めるための段取りも上手になります。小さな失敗を繰り返すことで、知恵がついていくのです。
さらに、山小屋を作るためにホームセンターに何十回と通ううちに、店長とは顔パスで軽トラを貸してもらえるほどの関係になりました。そこから私は、効率よく仕事をするためには、何事も人間関係、信頼関係が大切だと考えるようになりました。お客様に対しても、信頼を勝ち取るためには、何回も何十回も足を運ぶことが必要です。
キャンプ場という当初の目的は、いつのまにか輪郭がぼやけているのかもしれません。
それでも林さんは、今日も山に入ります。木を伐り、菌を打ち、ほだ木を積み重ねる。その繰り返しの中で育っているのは、キノコだけではなさそうです。
段取りの知恵、人との信頼、そして頭より先に手を動かす感覚…。山という場が、仕事の本質を静かに教え続けています。