株主の皆さまにおかれましては、平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
2025年4月1日より代表取締役 社長執行役員に就任いたしました向山浩正でございます。
第97期(2024年4月1日から2025年3月31日まで)の事業をご報告するにあたり、ごあいさつを申し上げます。
はじめに、次期中期経営計画につきましては、米国の関税政策等により世界情勢が不透明であることから、開示を延期いたしました。株主の皆様にはご心配をおかけいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
これまでのKOAの経営から何を継承しますか?
前社長が講じた積極投資をKOAの成長・お客様の喜びと安心感につなげる
創業の精神や5つの主体との信頼関係の構築はもちろん引き継いでいきますが、花形前社長のもと2030ビジョンが策定され、そのフェーズ1においては、今後の需要拡大とBCP対応に備えて生産インフラへの投資を行い、増産体制の構築がなされました。世界経済の不透明な状況により、当初想定していた受注予測と異なる状況が発生し、また、為替変動の影響で工場建設コストが上昇したことから減価償却費等の固定費が増加して厳しい財務状況にあるものの、前社長が講じた戦略は必ず奏功すると信じます。長期的な視点に立てば、環境対応車への移行と自動運転に向けた技術の実用化により、当社グループが手がける電子部品の自動車向け需要は着実に増加するからです。
今後成長が期待される市場へのビジネス拡大、新製品・新事業の事業化加速を重要な経営方針として位置付け、実現に向けて取り組んでまいります。
KOAが今、取り組むべきことは何ですか?
まず売上を伸ばしコストを抑え、現場主義に立つ
現在KOAを取り巻く環境は厳しく、とりわけ海外の情勢は不透明です。
まず、政府の支援のもとBYDに代表される電気自動車メーカーが台頭している中国では、日米欧の自動車メーカーのTier1が苦戦しています。Tier1メーカーへ製品を納入する当社としては、日米欧の自動車メーカーの業績回復を期待するとともに、中国自動車メーカー及び中国系のTier1へも販売強化を図る必要があります。
アメリカにおいては、トランプ政権による関税の影響はKOAにも及びます。同国への輸出は今後、海外に製造拠点を複数もつ強みを生かし、関税の影響がより小さいマレーシア工場から継続してお客様への影響を最小化します。一方、日本のみで生産している製品については、日米政府の交渉の行方を注視すると共に、必要に応じて海外工場での生産可能性の検討も行います。
KOAの株価は現在1,000円を切り、PBRもPERも厳しい数字です。まずはROEを上げるべく、売上を伸ばし、コストを抑えることに力を注ぎます。
そのうえで、現場主義に立った成長戦略を描きます。私も含め経営層も間接部門も直接現場に出向き、自分の目で見、自分の耳で現場の人の声を聞いて現状を把握します。社員が本音で語れる信頼関係を築くべく、社内のあらゆる階層へ同じ目線で向き合える視座を幹部社員も含め養います。
現場主義に立ったうえで、どんな戦略を実践しますか?
売上や利益に直結する部門の強化、材料開発、DX
現場重視の考えのもと直接部門の強化に努めます。経費削減を怠ることなく、開発や販売など、売上や利益に直結する人員配分は厚くしたいと考えます。とくに開発部門は、お客様からの開発依頼に対し、人的リソース不足を理由に断ることは避け、前向きにチャンスを求め続けます。
次に注力すべきは、材料技術力のアップです。材料メーカーからの提案のみならず、自社開発や産学官連携や機械学習等を利用した材料探索の効率化なども活用し、特性も良く、長期安定性もあり、TCR*にも優れ、安くて安定調達できる、そうした材料を社内で独自に見出せたら、製品開発における課題解決の際、構造で対処する物理的アプローチに加え、材料技術から迫る化学的アプローチも取れます。基礎研究、製品開発、お客様と向き合う技術担当の役割分担を明確にし、互いの連携を強化して、KOAの差別化が叶い、確実に収益につながる技術開発に取り組みます。材料技術に関するノウハウは、必ずやKOAの強みになるでしょう。
もうひとつの強化ポイントはDXです。DXは業務の無駄を省き生産革新及び業務革新を可能にします。一部で外部委託も行いつつ、社内の情報システム部門へ、DXが分かりDXを実践できる人材を確保します。
*TCR:温度差1℃あたりの抵抗値変化率
社長として、KOAをどんな会社に導きますか?
お客様に安心感を与え、言葉ではなく結果で語る会社に
私が目指す会社は、製品価格のみならず安心感をもって、お客様に喜んでいただける会社です。「KOAに頼めば品質は良いし、万一不良が出てもすぐに対応してくれる。分析もやってくれる、納期に不安もない。いろいろ試してみたけど、最終的にはKOAに勝るところはないよね」、その安心感は鉄板だと評価していただきたい。それゆえに、KOAがずっと大切にしてきた誠実さ、真面目さは変えてはいけないと信じます。
次に、口で語る会社ではなく、結果で語る会社にします。これまで私は不言実行、有言実行を旨としてきました。これからも、リスクが小さく慎重な検討が不要な際は、やると決めたら即行動に移します。リスクの大きいものは皆と相談し、知見を高め、多角的に見て将来性なども加味し、KOAの進むべき方向を共有したうえでジャッジします。
最初は小さなものでも、まずは結果を出すことが大事です。結果を出せば実力と自信がつき、喜びも得られます。小さな成果を積み重ねることで、次は中レベルのチャレンジへ、さらに大きなチャレンジへ進めます。KOAをそんな会社にすることで、株主の皆様にご期待される会社を目指します。これからもKOAへのご支援をよろしくお願い申し上げます。